私にとって宝物のようなゲーム。
ドラゴンクエスト
その中でも4.5.6のストーリーはかなり好きな部類であり5は今でも名作として語り継がれている名作。
今回3DCG映画化されるということで早速観にいきました。
ということで、超個人的感想ですが、良かった点と悪かった点を書いていこうかと思います。
この記事はネタバレがありますのでこれから観る方は注意してください。
良かった点
〇 3DCGの出来が良い
当初は「えー。鳥山明じゃないのかよ。なんだかドラクエの感じしないなぁ…」なんて思っていたのですが、実際に映画を観るとそんなことは全く気になりませんでした。
モンスターはまんま鳥山デザインですけどね。
全く鳥山感のない主要キャラでもしっかりとドラクエの世界観が再現されていて、モンスターの動きや主人公の表情、キラーパンサーやスライムの質感などが完璧。
実写実写してるわけでもアニメアニメしてるわけでもなく、非常に良いバランスだったと思うし、魔法に関するエフェクトも良かったと思います。
メラゾーマとベギラゴンは多少迫力不足だったかな。
〇 BGMは歴代のドラクエミュージック
これはやっぱり外せません!
ドラクエといえばBGM!
すぎやまこういち先生の名曲たちは何ねん経っても色褪せることは無く、これぞドラクエの世界観といえるものばかり。
特に今回はドラクエ5がモチーフとなっているのでどうかと思ったのですが、4の戦闘や3のフィールド、2のエンディングや3のエンディング、他にも6や11の曲も使われていて最高でした!
〇主人公は幼いころからフローラと知り合いだった
映画の序盤、レヌール城でおばけ退治しベビパンサーを仲間にするところまではスーパーファミコンの映像を使ったダイジェストで進むのですが、そのダイジェストは単にスーパーファミコンのプレイ動画を使ったわけではなく、ちゃんと映画用にアレンジされていました。
主人公が幼い頃パパスはルドマンと知り合っているという設定になっており、そこで幼い主人公と幼いフローラが出会っているという描写がありました。
これは本来スーパーファミコン版には無いシーンなので非常によかったです。
もともとスーファミ版主人公は別に結婚したくてルドマン家に行ったのではなく、ルドマン家に天空の楯があるという情報を得たので訪れただけなんです。
そしたらたまたまフローラと結婚したい人たちがたくさんいて、その列に並んでいたら主人公も結婚希望者とされただけなんです。
いうなれば、天空の楯が欲しくてルドマンさんからの試練を受けていただけで、フローラに対する思いなんて全然ないはずなんです。
この町に来た時、町の入り口でフローラと会ったのが初対面。
それがちゃっかり結婚希望者になるって、どんだけチャラいんだよ!w
と、なるところを映画ではうまくアレンジしていたと思いました。
〇 細かいネタを再現
トムというラインハットの兵士がいます。
幼いヘンリーがトムのベッドにカエルをいれるなどのいたずらにいつも手を焼いていたトムですが、奴隷時代を経てヘンリーが再びラインハットを訪れる時、このカエルのエピソードをヘンリーから聞いたことによってトムはヘンリーが生きて帰ってきたと確信するシーンがあります。
この細かいやりとりをきっちり映画でも再現していました。
〇 ビアンカとの結婚生活
結婚シーンと言えばこの作品のひとつの肝。
たいていの人は初見ではビアンカを選び、再びゲームをやる時はフローラを選ぶというようなことをするのではないでしょうか。
劇中のビアンカは賞金稼ぎのようなポジションになってて、主人公がフローラと結婚しようかという頃に再会、ブオーンを倒して天空の剣を手に入れるという目的のために行動をともにします。
結果、天空の剣を手に入れ、フローラにプロポーズするものの、ビアンカへの思いに気づきビアンカへプロポーズをする。
「いや、フローラに結婚してくださいとまで言っちゃったのにそれはありなの?」とは思うものの、ビアンカの表情などに感動。
そしてゲームでは描かれていないビアンカの育児が描かれていたのは良かったです。
〇 ブオーンが仲間になる
クライマックスではやたらと敵が多くてとても人間数人と仲間モンスター数匹では太刀打ちできない数。
そこにブオーンがヘンリーの軍艦と共に現れて大乱闘になるという展開はけっこう好きでした。
ONE PIECEていう頂上決戦みたいな感じです。
〇 勇者の強さが圧倒的
主人公の息子である勇者が生まれると天空の剣が何やらカタカタ動き出すシーン、8年後に天空の剣を抜くシーン、とても良かったです。
8年間という空白の時間でどれだけの修行をしたのかはわからないけれど、天空のつるぎを手にしてからの勇者は完全に無双状態。
雑魚を一掃するスピード感、クライマックスでのギガデイン、非常によく描かれています。
〇 主人公も勇者に?
ドラクエ5というのはプレイヤーが勇者になるわけではありません。
主人公の息子が勇者。
ドラクエは代々勇者の物語として描かれてる世界観ですがドラクエ5は主人公が勇者ではないんです。
それがこの映画の中ではラストの大オチがあることによって、主人公もある意味勇者として描かれています。
オチはどうあれ、観てる客=プレイヤー=主人公=勇者という図式にしたことに関しては関心したのでこれを良かった点として記載します。
といった具合に、ドラクエファンでも充分楽しめる要素が満載でした。
悪かった点
〇 プサン登場は早すぎる
プサンというのは物語のキーになるマスタードラゴンが人間の姿になった時の名前。
ドラゴンオーブでドラゴンの力を取り戻すんですけど、けっこう序盤にでてきて「俺はプサン」って自己紹介しちゃうもんだからその瞬間に「このおっさんがマスタードラゴンなのか…」と思いながら見てしまった。
始めのうちは名乗らなくてもよかったんじゃないかと思います。
〇 急に出てきたポワン様
主人公が幼い頃に妖精のベラに会い、妖精の村で春風のフルートを取り戻してあげるという話しがあります。
もちろん映画では全カット。
でも主人公を過去に送るのに妖精の力が必要とかで、試練を経て妖精の国に行きます。
そこでポワン様らしき王女に会うのですが、そもそも幼い頃に主人公が妖精の村で一役買ったから大人になってからもポワン様は快く会ってくれたわけで、映画のように試練を越えれば会えるという世界じゃないんだよな……。
少年期をダイジェストカットしてるからこういう無理な設定にしなきゃいけなくなったんだろうけど…
〇 声優陣が有名俳優だらけ
完全に好みの問題ですが主人公リュカの佐藤健やビアンカの有村架純は別に違和感なくみれました。
その他に誰が声優を勤めているのか全くわからない状態で観たのですが安田顕と賀来千香子は言葉を発した瞬間にわかりました。
そう思ってしまうと、もはやプサンは安田顕であって、もはやマーサは賀来千香子なんです。
ヘンリーも個人的にはイマイチだなーと思ったら坂口健太郎、サンチョもちょっとなーとおもったらケンドーコバヤシ。
みんな俳優としては一流かもしれないけど、声の仕事は声のプロがやればいいと思いました。
ゲマの吉田鋼太郎、ブオーンの古田新太はなんの違和感もありませんでした。
パパスの山田孝之も良かったと思います。
でもやっぱりね、専門のプロにやって貰ったほうがいいよ。
〇 主人公の成長度合いが伝わらない
特に修行を積んだわけでもない主人公が急にバギを使いだして、気づけばバギクロスを使えるようになってるのですが、奴隷で10年、石化で8年という月日を無駄にしてきた主人公がここまで短期間で強くなるというのは少々無理があるように思えた。
〇 レヌール城とゲレゲレ救出がダイジェスト処理された
ドラクエの世界を100分の映画にするんだから展開やカットやダイジェストで処理されることは予想済みではあったけど、ここはちゃんと掘り下げてほしかった。
大オチを考えるとここはダイジェスト処理するしかなかったんだろうけど……
〇 再会はあっさり
ゲレゲレは幼少の主人公がゲマにさらわれた後は野に還るのですが、パパスの剣を誰にも渡さない様に穴倉に潜んでパパスの剣を守る番犬のような存在になります。
そこに懐かしの主人公があらわれてビアンカのリボンによってふたたび主人公に仕え、主人公はパパスの剣を手に冒険をするんです。
この再会もドラクエ5の名場面のひとつだと思うのですが、映画では単にキラーパンサーと出会い「あれ?ゲレゲレじゃないかー(^^)」と急にパーティーに加わりました…。
う、うすい……。
〇 奴隷からの脱出・独身貴族のヘンリー
これも尺を考えるとしかたのないことなのですが、奴隷時代にマリアを助けるというシーンはありませんでした。
奴隷を監視する側のマリアの兄の苦悩もなければムチ男への反逆もありません。
自分の体に糞を塗り手繰って樽に入ってあっさり脱出。
奴隷として作らされてるのが何のための神殿だったのかも、もうちょいハッキリしてもよかったかなと思いました。
マリアが出てこないので修道院でのシーンもなく、ヘンリーの結婚もなければラインハットを救うというヘンリーサイドの話しも全カット。
尺を考えたらしかたのない事なんだけどさ……
主人公がヘンリーに対して敬語なのも気になった。
〇 幻のグランバニア王国
主人公の名前がリュカ・なんたら・グランバニアだそうで、名前の中にグランバニアと入っているんだけど、パパスがグランバニアの王である事もリュカが王子であることも全く本作では触れず、グランバニア王国そのものが出てきません。
冒頭のスーファミ映像ではパパス王がリュカの誕生にそわそわするシーンがあるのに、全くそこには触れないという悲しき主人公でした。
〇 子供は一人っ子
主人公の子どもは本来双子で、男の子と女の子がいるんです。
確かに女の子は何をやったわけでもないのでカットされてもしかたないけど、とはいえやっぱり主人公の石化を解きにくるのはサンチョ・息子・娘というパーティーがよかったな。
〇 未経験者は置いてけぼり
とにかく駆け足!
もちろん100分の中に収めるにはハショることは当たり前。
とは言え、ドラクエ5をやったことのない人にはちんぷんかんぷんな内容になってると思いました。
プレイしたことのある人には「あのネタだ!」とか「こういうふうにしたのか!」とかあるけど、やったことない人には「え?なんで?」「そんな伏線あった?」と感じる部分は多いんじゃないかな。
〇 オチで大崩壊
まぁなんだかんだダラダラ書きましたけど、結局これですよ…。
ドラクエの世界観に没入して、高揚して、さぁいよいよミルドラースの登場だと思った瞬間、主人公以外が全て停止。
なぞのひょっとこ野郎が現れて「これは全部ゲームの世界」……。
……。
え?
実はこの世界は主人公の高校生がドラクエ5のリメイクをVRで楽しんでいただけという世界。
ひょっとこ野郎はウィルスだそうで、VRの世界を壊しにきたんですと。
でウィルスを作ったプログラマーからのメッセージが。
「いいかげん大人になれ」
……。
へ?
旅の途中ずっと一緒だったスラリンは実はアンチウィルス監視プログラムだそうで、急に「私はアンチウィルス監視プログラムだったのだ!!」ですって。
……。
は?
スラリンの背中からロトの剣と言う名のウィルス撃退プログラムが出てきて、主人公はそれでウィルスを退治。
「この世界はヴァーチャルかもしれないが経験や思いは間違いなく現実なんだーー!」
……。
あ?
こうしてプレイヤーは勇者となってロトの剣でウィルスを退治しました……。
……。
で?
エンディングです。
子供時代がダイジェストだったのはこのVRをやる時に少年時代をカットするというモードを選んだから。
フローラに求婚したのは、いつもビアンカだから今回は絶対フローラにしようと設定したから。
そんなのあり?
ミルドラースは?
家族は?
みんなテクスチャ。
みんな0と1で出来たデジタル信号。
急にマトリックスの世界観!(笑)
映画の冒頭にそういうシーンがあるとか、エンディングではリアルな世界に戻って「やっぱドラクエは最高だ」みたいな日常を描くとか、そういうのならまだわかるけど、普通にドラクエの世界に没入してたのに急にこれはないよ。
ウィルスをやっつけるって、やってることサマーウォーズだろww
いや、あれはウィルス退治で実際の世界を救ってるからこっちの方が始末が悪い。
上映が終わり、ドラクエファンは唖然。
子どもたちはなんのこっちゃポカン。
ファン以外の人は、オチはわかったけど途中途中が駆け足過ぎて意味不明。
誰に見せたかった映画なのでしょうか……。
なんで気持ちよくドラクエの世界に浸ってたのに急に説教されにゃイカンの?
で、ドラクエの世界はゲームだけど僕たちが経験したドキドキは現実の物だったみたいなメッセージ、いる?
それはプレイ経験者ならみんなそうなのよ。
そういうんじゃなくて、普通に普通にドラクエの世界を全うしてくれればよかったのに!
ミルドラース戦を楽しみにしてたし、なんならエスタークの影がちらつくくらいの期待もしてたよ!!
なのに……。
変なひょっとこ野郎が出てきて冷めたわ……。
エンディングでビアンカが「私たちの生活よ」みたいなこと言ってたけど、その時の主人公にはそれがプログラムされたVRの世界だということはわかってたんだから、主人公の気持ちになってみても冷めるわー…。
「ワタシタチノセイカツヨ」
なんであんなふうにしちゃったんだろ。
なんで2時間半くらいの作品にしてもっとじっくり再現しなかったんだろ。
どうしてオリジナル以外のことをやらなきゃ気が済まないのだろうか…。
まとめ
というわけで、終盤までけっこう楽しく見ていたのですが、最後の最後で監督のおもちゃとなり台無しになった作品でした。
もっと長尺でもっと再現率の高いドラクエ6の映像化を希望します。
ちなみにルパン3世も3DCG化されるそうで、予告編が流れてましたけど、あれは3DCGじゃなくて普通のアニメにしておけばいいのに…。